泌尿器科は、腎臓、尿管、膀胱、前立腺など、「尿の産生から排尿までの尿路」(泌尿器)に関係する臓器を対象とする診療科です。
対象臓器の形態が男性と女性ではかなり異なるため、男性だけの病気もあれば、女性に多い病気もあります。

当院の診療対象と
なる主な泌尿器科疾患

膀胱がん

膀胱がんは、50歳代以上に多いがんです。自覚症状の無い血尿(痛みなどの症状を伴わない血尿)が出た時は、要注意です。コーラのような色から、真っ赤な鮮血までいろいろですが、尿の一般的な検査に加え、細胞検査、超音波検査や膀胱内視鏡を用いた検査を行います。
膀胱がんは喫煙歴や有機溶剤との関連性が知られています。早期に発見できれば、内視鏡手術で治療することが可能ですが、進行がんや悪性度の高い浸潤がんなどは、膀胱を取る大手術を行わなければならないケースもあります。

腎(尿管)結石症

尿管結石では、その痛みの強さから救急車で医療施設を受診する方も少なくありません。尿管では結石は発生しませんので、尿管結石は必ず腎結石が尿管に落下して起こります。腎臓に結石がある間は、ほとんどの方が無症状で、大きい結石の場合に時々鈍痛がある程度です。結石の成分により発生原因は様々ですが、何回も繰り返しやすい病気です。
当院では尿検査・超音波検査・レントゲン検査を用いて、尿管結石の診断や治療、腎結石の経過観察などを行います。自然に排出されない尿管結石や大きい腎結石では、適切な治療連携病院への手術紹介も行っております。

前立腺肥大症

男性は年をとってくると、若い頃に比べて尿の出が悪くなるものです。その原因の中で一番多いのが、前立腺肥大症です。前立腺が肥大して大きくなると、内側を走る尿道を圧迫したり、前立腺の筋肉が過剰に収縮して尿道が圧迫されたりするために、尿が出にくくなるなどの排尿障害が現れるようになります。前立腺肥大症による排尿障害を長い期間放置しておくと、さらに肥大が進み、膀胱に残る尿の量が増え、尿路感染症や腎不全などの疾患を引き起こすことがあります。症状が現れたら、自己判断せずに早めに泌尿器科専門医を受診しましょう。

前立腺肥大症の治療

前立腺肥大症の治療では、以前は手術で前立腺を切除する方法が主流でした。現在では内服薬による治療が中心となっており、「α1遮断薬」が前立腺肥大症に付随する排尿障害に対する第1選択薬となっています。一方、前立腺肥大が比較的大きい方には「5α-還元酵素阻害薬」を使用すれば、前立腺がおよそ10~30%縮小します。症状を緩和するための「PDE5阻害剤」服用も有効です。その他、重大な副作用がほとんど生じない「生薬製剤」も安心して服用いただけます。
当院では、治療による体への負担、前立腺肥大の程度・自覚症状・合併症の有無などをチェックしながら、専門医の判断のもと適切に薬剤を選択して治療を進めていきます。

前立腺がん

前立腺がんは、年齢とともに増えてくる病気です。近年、日本では急激に前立腺がんの患者数が増加しており、1975年に年間約2,400人だった患者数が2006年には年間4万2,000人にも増加しています。がんの中でも、今後、最も増え方の著しいがんと言えるでしょう。

PSAは前立腺内で作られるたんぱく質の一種で、前立腺から血液中に流れ出たPSAを採血で測定しているものです。一般には4以上を異常値として扱いますが、4を超えたら癌であるとか4以下であるので癌がない、などPSAだけで癌の診断を下せる検査ではありません。
また、前立腺肥大症や前立腺炎、排尿障害など前立腺の状態で癌がなくても4を超える数値を取る方もいらっしゃいます。泌尿器科専門医はPSAの数値に前立腺のサイズや状況を加味して総合的に癌の疑いが高いか低いかを推測いたします。PSA検査の実施とその判定についてはぜひ泌尿器科専門医にお任せください。

前立腺がんの症状

前立腺がんに特有の症状というものはありません。初期には症状のない前立腺がんでも進行すれば、血尿が出たり転移による骨の痛みや腰痛が出たりすることがあります。進行がんになるまで症状が出ませんので、ほとんどの方で、PSAという前立腺がんの腫瘍マーカーが正常値を越えていることでがんが疑われます。前立腺肥大症や慢性前立腺炎でもPSAが上昇することが多いため、専門医はPSAが高い理由ががんによるものかどうかを推測いたします。その結果で、がんによるPSA上昇が疑われた場合には、MRIや針による生検といった精密検査を実施します。
当院では、前立腺がんが疑われる患者さんには適切な連携病院へ精密検査の紹介をいたします。また、がんと診断された場合での経過観察およびホルモン療法(薬物療法)に対応しており、多数の前立腺がんの患者さんを日々診療しておりますので、安心して受診することができます。

過活動膀胱(頻尿、尿失禁)

過活動膀胱の主な症状は、「頻尿(トイレが近い)」「尿意切迫感(急な我慢できない尿意)」「切迫性尿失禁」の3つです。特に尿意切迫感があれば、過活動膀胱の可能性があります。60歳台の10%の方に過活動膀胱の症状があり、その割合は年齢とともに増加します。実際に悩んでおられる方は大変多いのですが、羞恥心から我慢している方がほとんどです。ひとりで悩まず、専門医にご相談ください。

過活動膀胱の症状

頻尿(トイレが近い)

人がトイレに行く回数は、日中で5~7回、就寝中は0回が正常と言われます。日中8回以上トイレに行き、夜間は1回以上トイレに起きるようなら、それは頻尿症状と言えます。

尿意切迫感
(急な我慢できない尿意)

人は、最初に尿意を感じてから1時間くらいは我慢できます。しかし尿意切迫感のある方では、強い尿意が突然訪れるとともに、一度その尿意を感じると我慢することが難しく、トイレに駆け込まなければなりません。

切迫性尿失禁

急に尿がしたくなり、その高まりが急なためにトイレに着くまで我慢ができず、もらしてしまうタイプの尿失禁です。

間質性膀胱炎

原因不明の炎症が膀胱に生じ、頻尿と膀胱や下腹部の痛みなどが現れる病気です。年齢的には40歳以上が多く、女性に目立ちます。特に尿が貯まってきた際に恥骨上部の痛みを訴えるようなら、間質性膀胱炎の疑いがあります。超音波検査では異常がみられませんが、膀胱鏡検査でハンナ病変という特徴的な所見あるいは点状出血を認めた場合には、間質性膀胱炎の診断が確実なものになります(これらの所見が無くても、間質性膀胱炎と診断して治療を行うこともあります)。
治療は麻酔をかけての水圧拡張術、薬物療法などを行います。慢性膀胱炎や過活動膀胱と診断されて薬剤投与を受けていたりしますが、軽快せずに複数の医療機関を受診なさる患者さんも、少なからず見受けられます。間質性膀胱炎は、医師が疑わない限り診断されることはありませんので、もしも疑われるような場合には泌尿器科専門医への受診を強くお勧めします。
当院では間質性膀胱炎患者を多数診断治療した経験を持つ専門医が診察いたします。

神経因性膀胱

神経因性膀胱とは、排尿をコントロールしている脳・脊髄・末梢神経といった神経回路のどこかに病気やけがによる損傷(脳梗塞や脳出血、脊髄損傷、糖尿病による末梢神経の障害など)が生じることで、尿を溜めたり出したりすることが、うまくできなくなった状態です。神経に異常がなくても膀胱そのものの機能が落ちて起きることもあります。症状は頻尿をはじめ、急な尿意、トイレに間に合わない、尿が途中で止まる、尿勢が弱い、排尿に時間がかかる、尿閉(尿が詰まって出せなくなる)など多岐にわたります。
治療では、薬物療法により膀胱機能の調節を行ないますが、どうしても尿が出せない方では細い管(カテーテル)を自身で尿道に挿入して尿を抜く操作を覚えていただくことがあります。当院では神経因性膀胱に精通する泌尿器科専門医が的確な診断と治療を行っております。

膀胱炎

膀胱炎は女性に多い病気で、ほとんどは尿道から大腸菌などの細菌が入り込んで発症します。特に女性は尿道が短く細菌が膀胱に侵入しやすいので、膀胱炎になりやすく、再発を繰り返す方も少なくありません。
膀胱炎の主な症状には排尿痛、頻尿、排尿時の不快感、血尿などがあります。通常は症状をもとに、尿検査と尿の細菌培養検査で診断します。治らない場合やくり返し再発する場合は膀胱内視鏡検査が必要になることもあります。

急性細菌性膀胱炎の治療法

抗生物質を投与すれば良くなります。5~7日間薬を服用した後、自覚症状がなくなり、尿検査で細菌や炎症反応が消失すれば内服薬を中止できます。抗生物質を服用してから尿の培養検査をしても細菌検出ができないことが多いため、抗生物質の服用前に尿を培養検査に提出します。以前は、膀胱炎はたいていの抗生物質を内服すれば治りましたが、最近は耐性菌も多いため、細菌検査で薬剤感受性を見ながら薬を選択しないと、治らない場合もあります。そうした事態を防ぐためにも泌尿器科専門医での診断と治療をお勧めします。

慢性細菌性膀胱炎の治療

慢性化して常時細菌が膀胱内にある状態の方では、膀胱炎の症状が出た時だけ抗生物質を7~10日ほど服用いたします。抗生物質を服用しても細菌が消失することはありませんので、症状および悪化した炎症の鎮静化を目的に抗生物質を一時的に服用します。定期的な尿の状態のチェックと膀胱の管理が必要になります。

慢性非細菌性膀胱炎

細菌によらない慢性膀胱炎は、細菌性膀胱炎と症状がほぼ同じですので、尿検査や尿培養で細菌が原因でないことを調べる必要があります。抗生物質を服用しても一向に良くならない膀胱炎ではこの状態を疑う必要があります。症状を落ち着かせる内服薬のほか、漢方薬も有効です。

血尿、蛋白尿

血尿・蛋白尿は尿検査(検尿)で診断できます。血尿は、尿中に赤血球がもれ出ている状態で、潜血といって尿が赤くなくても血尿の場合があります。また、蛋白尿は尿中に蛋白がもれ出ている状態です。激しい運動後や体調不良の時だけ蛋白尿や血尿が出る場合もあります。血尿・蛋白尿が出た場合は、腎臓や尿路に病気のある可能性があるため、超音波検査や採血検査、尿細胞診検査などを行って調べます。

のう水腫

陰嚢内(精巣の周囲)に水が溜まる病気で、陰嚢が膨らんだり、左右の大きさに違いが生じたりします。通常、痛みは伴いません。あらゆる年齢層でみられますが、乳幼児と高齢者に多い疾患です。
陰嚢水腫の原因は、大人と小児で違いがあります。大人の陰嚢水腫は「非交通性」と呼ばれ、精巣を包む漿膜という膜の内側にリンパ液が溜ることで発症します。一方、小児の陰嚢水腫は「交通性」と呼ばれ、本来なら閉じている腹膜と精巣漿膜の間が閉じずに腹膜と漿膜の間に交通性(つながっている)が生まれ、腹水が漿膜に溜まってしまうことが原因です。
治療は、大人では陰嚢に針を刺して中の液体を注射器で吸引することもありますが、効果は一時的で、再び溜まってきます。したがって根治させるには、水の溜まった袋(鞘膜)を手術で切除する必要があります。小児の場合は自然に治ることが多いため、しばらくは経過を観察します。ただし、3歳頃になっても治癒しない場合や、鼠径ヘルニアを合併する場合、また本人が気にしていたり、歩きにくかったりする場合などは手術の適応になります。